誰の権威の下でか


 I 貴方は誰ですか?

 まず最初に私は明るい部屋のなかの呼吸であるにすぎません。
 最初はいつも私は怯え、固くなりそして敏感です。
 私の喉には翼がたくさん詰っていて、
 
私の指は、私自身を探している目のまえのにあって
 私の肉体のなかにある
 神聖な
 極めて単純であるが故に恥ずべき事象を
 おし隠している
 蜘蛛の巣にふるえもがきます。
 
 事象は神聖なのです。
 
 そのことを思いおこすとき
 私のなかに夜や湖や静けさが生じ
 私はそうしたものの中に入っていき
 他者を発見します。
 
 貴方は他者であり、
 私は、あるべき貴方の他の姿を発見する
 内面の光から
 一息ついた最初のときから貴方を知っています。


  II 貴方の家族は?

 私にある唯一の名前は、葉のように軽く
 幽霊の息のなかに誘う音あるいは水
 あるいは風に対して安全な石のほかに、
 保持すべき名前を私は持たないのです。
 
 私は私の名前を見つけようとしてきました。
 沈黙を保ちながら私は大気の話すのを
 また高台の地上をそして長い砂浜を聞いてきました。
 磯波のうなりと人間の単調なうなりが何であるかを知っていて
 一点で方向を変える生の風のなかにある叫びを顕著にする
 断崖の岩、浜辺の岩、丘の石、海辺の石の内部を
 聞き分けることを学んできましたが
 私は私の家族を何と呼ぶべきか
 あるいは私が誰であるのかを知らないのです。
 異邦人。
  
 残るものは
 異邦人の無色の言葉とともに
 声のなかに編みこまれて走る
 大地の息として残ります。
 
 支配力の如何なる名なしに
 私に何が為しえましょう?
 私にどんな言葉の綴りが編みえましょう?
 
 風は戻ってきます。
 海のしっかりとした音は前よりも弱くなります。
 
 私は私の持っているものを与えます。
 葉のなかにある息は歌となります。

 III 貴方の教師は?

 誰でもありません。大地です。
 土煙。石。乾いた真夏の石くず。
 子供のころ、ある日
 死後の生を思うかのように
 暖かな砂ぼこりのなかにしゃがみこみ
 私は蟻の動きを観察しました
 その時、私自身が蟻が住む砂ぼこりであることを
 また、蟻は私の死の根源であることを知りました。
 
 私のあばら骨と頭蓋骨の意思は再び大地に戻ることであることを私は知っています。
 
 誰でもありません。大気です。
 夜の心の雰囲気である深い天と
 輝く雲底からの生き生きとした回答を注ぎ返し
 誓約を補強し祈りを集め
 日中をおおう天。
 私はよく敷居の上に手をのばしたものです。
 責任をもつ精神は星の破片で私の手をいっぱいにしました。
 
 私は息をあげての質問を信頼します。何かがこぼれ返ってきます。
 
 誰でもありません。水です。
 轟いているかあるいは静かなのです。
 海の傍らで最後に崩れおちるまでは
 私は私の心を苦しめる
 寒さによって思想のなかに投げこまれた
 陰気な子供でした。
 私の沈黙はあのどっしりとした海に対して均衡を保ちました。
 海はその波浪を激しく打ち、きらきら光りひらめき
 泥板岩をすすぎまたすすぎ
 そしてほどけます。
 いたるところに落ちそして落ちて懸かる
 氷のような銀色の水、大地と空
 人に同化して生きるすべての事象の鼓動、
 私は人です。
 
 私はいたるところで混乱する水によって生きています。
 
 誰でもありません。火です。
 
 快い炎がゆらめきながら私の肌の下を走ります。
 私は蒼く、色づいていて、愛によってバラ色です。
 私の四肢は震えます。目をこらし彼の目に
 対することは最も勇気のいることで
 私はほとんど気が遠くなります。乾ききり。火に覆われ。
 
 類似性というものはありますが、火は
 
 ノース・アベニューにある大きな家の
 二階の部屋と屋根裏部屋のまわりに炸裂する
 波となって注ぐ大音響の炎と同じに見えることはありません。
 月に対して血よりも明るい、赤い貪り。
 黒ずんだ窓枠の背後の深紅は
 風のように唸った。
 私には重たいカーテンが、ベッドが、
 その傍らのテーブルが、火のなかに立っている
 鉄製のランプが、燃え上がるのが見えた、それらはすべて
 焼き尽くされ、恐ろしくも踊りまわるホースの下で
 暗黒のなかに燃えあがった。
 年老いたイサークがそこにいた。
 私は子供であった、朝、彼は煙を吐く
 濡れた木材、焦げた本、
 焼け焦げた階段へと、私を導いた。
 
 夜、死の家の上方、星々は燃えながら
 揺れ動いていた。
 
 あの大火事のようにではない、天からの火があります、
 手の下また心のなかに横たわる静かなページ
 貪り喰らう、夢のまわりにゆらめく炎、
 シナプス、橋の架かった距離、掉尾。
 
 それと同じ火です。
 火が私の教師です。

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