距離という寒さ


  閉じた窓、厚いガラス。草は生い茂り
 
雨の樹と呼ばれる逞しいオハイ樹の葉の繁りの広がりをゆする
 
風の音は聞こえない。
 
拷問にかけられたユーカリ樹の悲しげな叫びも
 
打ち付けられ窓ガラスをかする潅木の音も聞こえない。
 
 
これはすぐまじかなのにずっと遠くに離れているみたいに
 
私たちとは共にない -- はっきりしているけれど音のない --
 
神というものが見ている風景に似ているかもしれない。
 
あるいは夢にその面影を見る恋人同士にとって
 
会わなくっても永遠に信頼し得るということにも似ている。
 
 
距離という冷感。草の背後にある死人のように
 
蒼ざめた葉の模様。みなぎる葉群、
 
その葉群が暗闇にいざなう突進、
 
直立、重なり合い、険しい跛行、
 
そして枠の中に閉じ込められたすべてのものの全面的な静寂。
 
 
こうした美しさは冷たい痛み、内側に鈍い恐怖を宿す敷石
 
あるいは皮膚にある青黒い傷を容赦なく
 
打撃をくらわせ打ち壊す。まるで私は死んでいるみたい、
 
貴方のいるそこに起っているなにごとも私には現実であるとは思えないのです。
 
けれど私は死んではいない。私に愛など残されていはしない
 
 
こうしたひどい嵐は愛に似ていて、
 
これらの葉群、その葉群を吹き抜ける風の生気、
 
払暁の暗闇の中で全体を殴りつけ引き裂く雨、
 
あらわにも世界に落ちてくる夜。
 
隠れ場のない生の困難。
 
 
けれど私はガラスの極度の静寂の彼方の
 
一方では雨が叩き付ける
 
疾風の中に入って行き
 
狂乱する風に屈しながら
 
葉群が大声でその恐慌を歌うのを聞かなければならない。それが私の生。

 

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